「“請求しなかった期間”の年金はもうもらえない?」――時効のリアル

はじめに

障害年金や遺族年金の相談で、とても多い言葉があります。

「もっと早く知っていれば、もらえたはずなのに…」
「昔から症状はあったのに、請求しなかった期間はもう戻らないんですか?」

この“取り返しがつかないかもしれない”という不安と後悔。
あなたが悪いわけではありません。
制度そのものが複雑で、専門家でさえ慎重に扱う分野だからです。

結論から言うと:

年金は「時効で消える部分」がある一方で、
状況によっては“遡って受け取れるケース”もあります。

この記事では、
● 時効5年ルールの“本当の意味”
● 遡って受け取れる条件(遡及請求)
● 例外的に救済されるケース
を、あなたが判断できるレベルまで丁寧に整理します。


第1章 「時効5年」という残酷なルール

年金には 「5年の時効」 があります。
これは、国民年金法・厚生年金保険法に規定されるものです。

✔ 支分権(2か月ごとの支給)が5年で時効

→ 「本来もらえたはずの月から5年経つと、その月分は消滅する」

たとえば、
2015年に本来受け取れた年金があった場合、
2025年に請求しても、その分はもう受け取れません。

制度としては非常に厳しい内容ですが、
法律上は「時効消滅」として明確に定められています。

つまり、

“請求しなかった期間の全部が戻ってくる”ということはない。

これが現実です。


第2章 しかし「すべてが消えるわけではない」

――“遡及請求”が認められるケース

時効のルールがあっても、
以下の条件を満たすと “過去に遡って” 年金が認められる ことがあります。

■ 遡及請求(障害認定日の翌月からの支給)が可能になる条件

次の3つがそろっていることが必須です。

  1. 初診日の証明がある(必須)
  2. 障害認定日(初診日から1年6か月)時点の診断書がある
  3. その診断書の内容が、障害等級に該当している

これが揃えば、
最大5年分までさかのぼって支給可能 です。

ただし、

✔ 5年より前の期間は、どんな事情があっても戻らない

→ これは「時効」なので例外はありません。


第3章 「例外的救済」があるケース

――しかし“誰でも使える”わけではない

「時効は絶対に消えないのか?」
と聞かれることがあります。

制度上、ごく限られたケースで、
“例外的に時効が進行しない” と認められることがあります。

 年金機構側が“明確な誤案内”をしていた場合

例:

  • 本来受けられる制度を「あなたは対象外」と誤案内した
  • 手続きに必要な書類を誤って返戻した
  • 受理拒否があった

→ これは行政の過失が認められたときに限られます。

「極めて例外」であり、通常のケースでは適用されない。

YouTubeやSNSで
「時効は止まることがあります!」
と簡単に語られることがありますが、
正確には “ほとんどの人は対象にならない” というのが現実です。


第4章 「請求していない期間がある」人が確認すべき3つのポイント

過去にさかのぼる可能性があるか、
次の3つを専門家は必ずチェックします。


① 初診日の証明が取れるか

→ これが取れないと遡及請求は実質不可能です。


② 障害認定日時点の診断書を医師が作成できるか

→ 過去にカルテが残っていないと作成できない場合がある。


③ 認定日時点で障害等級に該当していたか

→ 現在の症状とは別に、
 “当時の状態” が法律の等級基準を満たす必要がある。


これらが揃って初めて、

遡及請求が成立する可能性がある。

「5年戻る」かどうかは、その後の話です。


第5章 あなたが“時効で損しない”ための結論

もし、
「昔から困っていたのに申請してこなかった」
という後悔があるなら、
自分を責める必要はありません。

制度そのものが、

  • 複雑
  • 医師の理解が必要
  • 初診日の証明が難しい
  • 認定基準が専門的
    こうした理由で申請を躊躇しやすくできているのです。

そして何より大事なのは、これです:

今日相談した人が、最も損しない人。
時効はこれから先の期間には適用されません。

「もっと早く知っていれば…」
そう思うあなたこそ、
今からできる最大限の対応をすればよいのです。


おわりに

年金は「請求しないと受け取れない」しくみ。
だからこそ、

知らないことが最大の損失になる
制度です。

時効で戻らない部分があっても、
今からでも遡及できる部分があるかもしれない。

そして、今日動けば、
これからの5年間の損失はゼロにできる。

後悔を未来に持ち越さないために、
まずは一歩だけ、相談してみてください。

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