障害年金の相談をしていると、
ときどき、こんな空気に出会います。
- 「働いたことがないと、さすがに厳しいですよね?」
- 「社会に出てないんだから、等級は低いんじゃ…」
- 「甘えてると思われませんか?」
そして、本人もまた、
どこかでそう思ってしまっている。
「一度も働けていない自分は、
障害年金を語る資格がないのではないか」
この記事では、
「就労歴がない人の障害年金」が
なぜここまで誤解されているのかを、
制度と現場の両面から整理します。
「働いたことがない=軽い障害」ではない
まず、最初に。
障害年金は、
“働いた実績”を評価する制度ではありません。
評価されるのは、
- 日常生活への支障
- 社会的な制限
- 継続性と程度
です。
にもかかわらず、
「一度も働けていない人」に対しては、
- 経験がないだけ
- 努力していないだけ
- まだ可能性がある
といった 道徳的な視線が向けられがちです。
これは、制度の問題ではなく、
社会の思い込みです。
実は、就労歴がない人のほうが重いケースも多い
現場で見ていると、
逆のことが起きています。
- 症状が出たのが若年期
- 学業の途中でつまずいた
- 就労以前に生活が破綻している
こうした人は、
「働けなかった」のではなく
「働く以前に、日常生活が成り立っていない」
状態であることが多い。
にもかかわらず、
- 職歴がない
- 比較対象がない
という理由で、
困難さが見えにくくなってしまう。
なぜ誤解が生まれるのか①
「働けない理由」が、言語化されにくい
一度も働いたことがない人は、
- 何ができないのか
- どこでつまずくのか
を、本人自身が説明できないことがあります。
なぜなら、
「できていた時期」が存在しないから。
比較ができない。
説明の軸がない。
その結果、
- 抽象的な表現
- 伝わりにくい訴え
になり、
書類上では軽く見えてしまう。
なぜ誤解が生まれるのか②
周囲が「可能性」を見てしまう
家族や支援者は、
善意でこう考えます。
- 若いから
- 働いたことがないだけ
- これから何とかなる
でも、制度は
未来の可能性を評価しません。
評価するのは、
「今、どうか」
「それが、どれくらい続いているか」
希望と評価軸を混同すると、
本人の苦しさが消えてしまいます。
初診日・保険要件のハードルは、別の問題
ここでよく混同されるのが、
- 就労歴がない
- 保険料を納めていない
という話です。
これは、
障害の重さとは別の問題です。
制度上、
- 初診日がいつか
- どの年金制度に属するか
が問われるだけで、
「働いていないから不利」
という評価は存在しません。
ここを混ぜて考えると、
不要な自己否定が生まれます。
「何もしていない」のではなく、「できなかった」
一度も働けていない人の多くは、
- 学校で限界が来ている
- 生活そのものが不安定
- 人との関係が築けない
つまり、
努力以前の段階で、
つまずき続けてきた
という人です。
それを、
- 実績がない
- 社会経験がない
という言葉で一括りにすると、
本質を見失います。
申請・更新で大事なのは「就労」ではない
就労歴がない人にとって、
重要なのは、
- 何ができないのか
- どの場面で支援が必要か
- それがどれくらい続いているか
これを、
生活の具体像として示すこと
です。
仕事の話がなくても、
評価は可能です。
むしろ、
仕事の話ができない理由
そのものが、評価対象
になることもあります。
最後に
「一度も働けていない」という事実は、
障害年金において、
- マイナスでも
- ズルでも
- 恥でも
ありません。
それは、
これまでの人生が、
どれだけ制限されてきたか
を示す、ひとつの現実です。
もし今、
「自分は対象外かもしれない」
と感じているなら、
それは 誤解の中で苦しんでいる証拠です。
制度は、
働いた人のためだけのものではありません。
