障害年金の相談をしていると、
ときどき、こんな感情に出会います。
- 良くなりたい気持ちはある
- でも、良くなったらどうなるのか分からない
- 正直、回復したくない気持ちがある
この言葉を口にした瞬間、
多くの人が、すぐにこう付け加えます。
「甘えてるわけじゃないんですけど…」
でも、まず言っておきたい。
その感情は、珍しくも、異常でもありません。
この記事では、
障害年金と「回復したくない気持ち」が
なぜ結びついてしまうのか、
その正体を整理します。
「回復したくない」とは、「悪くいたい」という意味ではない
最初に、ここをはっきりさせます。
回復したくない=病気でいたい、ではありません。
多くの場合、
本音はこうです。
- 回復した“後”が怖い
- その先に、何が待っているか分からない
- また同じ場所に戻される気がする
つまり、
恐れているのは、回復そのものではなく、
回復後の世界
です。
障害年金は「守られている状態」をつくる
障害年金をもらうことで、
生活は一定程度、守られます。
- 最低限の収入がある
- 医療につながり続けられる
- 「無理をしなくていい理由」がある
この状態は、
当事者にとって、
初めて得られた 安全圏 であることも多い。
だから、
ここを失う可能性が見えると、
強い不安が出る
回復=
この守られた状態が揺らぐ合図
に見えてしまうのです。
正体①
「回復=自己責任に戻される」恐怖
多くの人が、
無意識にこう感じています。
- 回復したら、もう支援はない
- 回復したら、普通に戻れと言われる
- 回復したら、また頑張らされる
これは、
過去の経験から来ています。
“できるようになった瞬間に、
求められるものが一気に増えた”
そんな体験がある人ほど、
回復を警戒します。
正体②
「回復すると、今までの苦しみが無かったことになる」
回復したとき、
周囲はこう言うかもしれません。
- 良かったね
- もう大丈夫だね
でも当事者は、
これまでの苦しさが、
一気に過去形にされる感覚
を持つことがあります。
- あれは何だったのか
- あの時間は無駄だったのか
回復が、
否定に感じられる瞬間です。
正体③
「回復後の役割」が見えていない
障害年金がある間は、
- 休んでいていい
- 動けなくても仕方ない
という立場が、
社会的に説明できます。
でも、回復した後は?
- どんな働き方?
- どんなペース?
- どんな位置づけ?
役割が見えない状態で、
回復だけ求められる
これが、
ブレーキになります。
正体④
「制度が、回復を罰するように見える」
現実として、
- 良くなると等級が下がる
- 動くと評価が変わる
こうしたケースがある。
だから、
回復=リスク
という認識が、
頭に刷り込まれます。
これは、
怠けではなく、
合理的な恐れです。
「回復したくない気持ち」を否定すると、回復は遠のく
大事なことがあります。
この気持ちを否定しても、
良い方向には進みません。
- 甘えだ
- 前向きになれ
- そんなこと考えるな
こう言われるほど、
人は心を閉じます。
必要なのは、
「なぜ怖いのか」を、
一つずつ言葉にすること
です。
回復は「切り替え」ではなく「移行」
多くの人が、
回復をこうイメージします。
ある日を境に、元通りになる
でも、現実は違います。
回復とは、
守られた状態から、
少しずつ移行するプロセス
です。
- 年金がいきなりゼロになる
- 支援が突然なくなる
そんな必要はありません。
最後に
「回復したくない気持ち」があるとき、
それは、
今の自分を守ろうとしているサイン
です。
責める必要はありません。
障害年金は、
回復を止める制度ではありません。
回復の仕方を、
ゆっくり選ぶための制度
です。
回復は、
勇気だけで起きるものではない。
安心があって、
初めて動き出せる
そのことを、
忘れないでください。
